金融業者であっても、時効期間を5年と推定しない

時効判例解説1 最判昭和44年5月2日

金融業者の貸付行為は、商行為かどうかというものが論点になったものです。
商行為であれば、時効期間は5年(商事債権)ですが、そうでなければ10年となります。

1商法は、商行為をなすを業とするものを商人とします。
2そして、商人が営業のためにする行為を商行為とします。
3さらに、商人の行為は営業の為にするものと推定されます。

営業の為なら、時効期間は5年になります。

なにか、ぐるぐるした議論で、とてもわかりにくいですね・・・。

貸付行為が絶対的商行為(1度でもやったらそれは常に商行為とするというもの)であると法律で指定されている場合、商行為を為すものとなって、1に該当して商人なので、商人が貸付したら、営業の為だと推定されて、5年という理屈になります。
貸金業は絶対的商行為に指定されていません。

絶対的商行為の他に、営業的商行為(指定するものを企業的にやり続けたらそれは商行為というもの)というものがありますが、そちらには「両替其他の銀行取引」というものが規定されており、これに該当すれば、商人となり、時効期間は5年になりそうですが、「両替其他の銀行取引」というにはは、貸付だけでなくて、預金も対象としている必要があり、お金を貸すだけの貸金業は銀行取引でないので、結局、貸金業は商法のいう商行為でないということになります。

結果、貸金業者の時効は10年というのが正解です。

しかし、再例外があって、これが会社がやったものですと、5年となります。

 会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とされている(会社法第5条)。

 会社は、自己の名をもって商行為をすることを業とする者として、商法上の商人に該当する(商法第4条第1項)。

 商人の行為は、その事業のためにするものと推定される(商法第503条第2項)。

結局、多くの場合は、5年になるのですが、会社でなく個人で営んでいる貸金業者の場合は10年が時効になります。
ですので、借りた先が、大手であれば、まず株式会社ですが、借りた先が個人でやっているところ(小さい業者ではたまにあります)ですと、10年が時効期間になってしまいます。そうなりますと、この判例が示すように個人事業かどうかが時効かどうかを見極める上で、大変重要になってきます。(なお、株式会社による貸金業ではなく別の法人による別の業態の場合も10年になることがあります。)

なお、5年、10年という時効期間は、2020.4改正により、原則5年に統一されます。