時効援用事件に関連する注意喚起情報

1 専門家との面談について義務・指針が出ています

日本弁護士会連合会は、全弁護士に債務整理に関する面談義務を課しています。
「債務整理事件処理の規律を定める規程」

日本司法書士会連合会も、「債務整理事件の処理に関する指針」において、「債務整理事件の依頼を受けるにあたっては、依頼者又はその法定代理人と直接面談して行うものとする。」と定めています。

債務整理事件の処理に関する指針 第5条
債務整理事件の依頼を受けるにあたっては、依頼者又はその法定代理人と直接面談して行うものとする。ただし、次に掲げる場合等合理的理由の存する場合で面談以外の方法によって依頼者本人であることの確認及びその意向が確認できるときは、この限りでない。(1)従前から面識がある場合(2)依頼者が現に依頼を受け又は受けようとしている者の保証人(連帯保証人を含む。)である場合で、債権者の厳しい取り立てを速やかに中止させる必要があるとき(3)依頼者が離島などの司法過疎地に居住する場合で、債権者の厳しい取り立てを速やかに中止させる必要があるとき

!! 背景として、面談せずに処置を行った結果、うまくいくはずのものがうまくいかなかったということが全国で多発した為です。

1-2 債務整理を電話のみで本人確認を済ませたとして司法書士に懲戒が出ています(平成28年1月26日)

当時東京の司法書士に対し、宮崎県司法書士会に債務整理の苦情通知が来たことを契機として発覚した事案です。東京司法書士会長は、依頼者と面談すること、補助者に包括的に処理させないこと等を注意勧告するも、その後も、依頼者と面談せずに、電話だけで本人確認を行っていることがわかり、さらに法務局長から戒告処分が出ています。

「東京司法書士会多重債務処理事件に関する規範規則第5条」
事件を処理するにあたって、依頼者に面談することなく、電話、郵便、電子メール等だけにより、事件を処理してはならない。



2 民事法律扶助手続き(法テラス)の案内についての努力義務が定められています。

日本司法書士会連合会 債務整理事件の処理に関する指針 10条3号
「依頼者が民事法律扶助制度における資力要件に該当する場合には、民事法律扶助制度を教示して、依頼者がこれを利用するか否かについて選択の機会を与えたうえで、その意向を十分に考慮するものとする。」

日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程 6条 」にも同様の定めがあります。
!! 弁護士、司法書士は、時効援用手続きを含む債務整理について、法テラスの民事法律扶助制度(法律費用の立替制度)を案内する努力義務があります。



3 東京簡裁で、相次いで、支払をしていても時効援用を肯定する判決が出る。

原則的には支払をしてしまうと時効が止まりますが、
!! 無理やり支払をさせた等の場合には、時効ができなくなるわけではない旨の判決が相次いで出ています。


4 訪問型の弁護士法人が現れています。

これまで、時効債権につき、家までくるのは、一部の業者のみでしたが、弁護士法人が家にまで請求に来る事案が表れています。
当然ながら、プロ中のプロですので、
!! 安易に話をしないようにご注意下さい。


5 時効債権での差押え事案が出ています。

これまで、時効債権での差押えはありませんでしたが、一部業者が、既に時効期間が満了している債権で、銀行口座を差押えるという事案が出ています。
裁判が終わってから10年経てば、また時効にかかりますが、その債務につき時効援用をせずに放置しておくと、一部業者が差押えをしてくる可能性がありますので、注意して下さい。
なお、この場合、請求異議訴訟等の手続きが必要となります。
!! 通常の時効と異なり、専門性が要求され、一般的に取扱いをしたことがない事務所が多いですので、ご依頼の際には、対応の可否についてご確認下さい。


6 興信所(探偵)が訪問するという事例が出ています。

遠方の債権者であれば、通常、家まで来ることはないことが多いのですが、探偵が代わりに訪問するという事例が現れました。探偵自体は取り立てはできませんが、「電話番号を教えろ」「債権者に電話するので、この電話に出てくれ」などと言って、債権者と接点を持たせようとします。もちろん、電話番号を教える必要はありませんし、電話に出てもいけません。
!!「お話しすることはない。」と言って帰ってもらいましょう。