生活保護と借金の関係

生活保護課との関係

1借金と生活保護利用

2生活保護利用後の借金

生活保護と債務整理

3生活保護と任意整理

4生活保護と時効

5生活保護と破産






1借金と生活保護利用

借金があると、一部の生活保護課では、生活保護を利用できないかのようなことを言うところがあります。

しかし、これは誤りです。

借金があっても、生活保護は利用を開始できます。
借金の関係で生活保護が利用の開始ができない場合は、次の場合に限られます。

「①年金担保貸付利用→②生活保護保護利用開始→③年金担保貸付利用」

2006年3月に「生活保護行政を適正に運営するための手引き」にて、過去に年金担保融資を利用するとともに生活保護を利用していた人が再度借入し、融資金を使い終わったあとに、保護申請する場合は、生活保護申請を原則却下するという通知が出ています。
 
なお、例外として、
「保護受給前に年金担保貸付を利用していたことが、社会通念上、真にやむを得ない場合」
「保護を適用しないことにより「急迫状況」に陥るおそれがある場合」
「再度借入の原則禁止について事前に周知されていない場合」
が規定されています。

従って、年金担保貸付の場面では、保護利用後に再度利用すると受けられないというケースがありますが(但し、それも例外場面もあるので、あきらめてはなりません。)、それ以外の場合は、却下する理由がありません。

にもかかわらず、保護の現場では、なぜ、借金のことが問題になるか。
それには次の事情があります。

生活保護手帳別冊問答集(中央法規)より
「保護開始前に医療費3万円を勤務先から借りていた。返済可能か。」

「過去の債務に対する弁済金を収入から控除することは認められない。その理由は、もしそのような措置を認めるならば、保護を受ける以前における個々人によって異なる程度に営まれてきた生活までも、本法によって保障することとなり、保護を要す状態に立ち至ったときから将来にむかってその最低限度の生活の維持を保証戦とする本法の目的から著しく逸脱することになるからである。」

つまり、生活保護費は、これから生活の為にあるのであって、過去の生活の為に支給されるわけではないので、必要経費とは認められないとの理由になっています。

保護課としては、このような厚生労働省の指針がありますので、借金があるとなると、そこに充てるという結果になると具合が悪いのです。
そこで、借金がある方については、「まずは借金をなんとかしてからでないと困る」などというのです。
しかし、厚生労働省が言っているのは、借金があったらダメではなく、借金に充てるのがダメなので、保護課の言い分は正しくありません。

保護課の心配を尊重するとすれば、借金があるが、それは、きちんと債務整理で処理するので、返済することはないということであれば、問題ありません。
従って、もしも、保護課が借金を理由に生活保護を拒むようならば、すでに借金については弁護士・司法書士に相談しているところですと言える状況であれば、なんら問題ないことになります。

なお、保護開始後に、なおも支払いをしているとなると、生活保護法27条によって、支払をしないよう指導がされることがあります。

この指示があってもなおも支払いをすると生活保護法62条によって、保護の停止、廃止ができうるので、注意が必要です。

「第二十七条 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。」

「(指示等に従う義務)
第六十二条 被保護者は、保護の実施機関が、第三十条第一項ただし書の規定により、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、若しくは私人の家庭に養護を委託して保護を行うことを決定したとき、又は第二十七条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない。
2 保護施設を利用する被保護者は、第四十六条の規定により定められたその保護施設の管理規程に従わなければならない。
3 保護の実施機関は、被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。
4 保護の実施機関は、前項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。
5 第三項の規定による処分については、行政手続法第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。」

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2生活保護利用後の借金

生活保護費による借金返済は、厚生労働省の指針によって、許されていないことを上記でご説明しました。
生活保護費は、これから生活の為にあるのであって、過去の生活の為に支給されるわけではない

それでは、保護利用「後」に貸付を受けた場合は、どのように解釈できるか考えてみましょう。

保護利用後の貸付ですので、生活保護費はこれからの生活の為だということでは、認められてもよさそうではあります。

ところが、これにも問題があります。

それが生活保護法61条の収入申告義務です。
保護利用者には、収入の申告義務があります。借入もお金が手元に入ってくるという事実については、収入と考えられてしまいます。
とすると、借入をすれば、それが収入として認定され、その月の保護費は、その分不要になると考えられてしまいます。(もちろん、返済義務がないというわけではなく、保護課との関係です。)

生活保護法78条で、不正受給であるとして、その分、保護課に返せという徴収金が発生すると言われています。
ただし、貸し借りが続く場合は、実際には借りたお金で返済しているにすぎず、借りた金額まるまるを収入認定するのは適切ではありません。
そこで、そのような場合は、利用できた分だけを収入として取り扱うべきだと言われています。

生活保護利用中の借金が認められる場合も例外的にあります。
それは、保護課に事前承認されていて、一定の場合であって、必要なものに充てられているというようなもののみについては、借金をしてもよいし、返済をしてもよいということになっています。

生活保護上、問題のない借金

(局長通知第8・2(3)より)

1 保護の実施機関の事前の承認があること
2 現実に当該貸付の趣旨に即し使用されているものに限る
3 当該被保護者世帯の自立更正のために当てられることにより収入として認定しないものは次のいずれかに該当するもの
  ア 事業の開始又は継続、就労及び技能習得のための貸付資金
  イ 就学資金(高等学校等就学費の支給対象とならない経費及び高等学校等就学費の基準額又は学習支援費で賄いきれない経費であって、その者の就学のために必要な最低限度の額に充てられる場合に限る。)
  ウ 医療費または介護費貸付資金
  エ 結婚資金
  オ 国または地方公共団体により行われる貸付資金等で、次に掲げるもの
    (ア) 住宅資金又は転宅資金
    (イ)老人又は身体障がい者等が機能回復訓練器具及び日常生活の便宜を図る為の器具を購入するための貸付資金
    (ウ)配電設備、給排水設備又は冷暖房のための貸付資金
    (エ)国民年金の受給権を得るために必要な任意加入保険料のための貸付資金

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3生活保護と任意整理

上記1でご説明した通り「生活保護費は、これから生活の為にあるのであって、過去の生活の為に支給されるわけではない」ということと、保護開始後の借金も上記2の通り、保護課の事前承認がなければ、許されていないということになっています。

したがって、法的に債務整理をするにあたっても、支払い交渉をするということが基本的に適当であるとされていません。

数万円くらいの少額の場合で、破産するほどではないというような場合には、保護課が例外的に支払いを認めることもありますが、10万円を超えてきますと、そういうわけにもいかないというのが実態です。

法的整理をするにあたっては、生活保護利用の方は、その費用が国が立替て、その後も生活保護が見込まれる場合には、免除としています。

しかし、これを実施しています「法テラス」という機関は、支払を前提とする場合は、厚生労働省の指針と反するので、支援ができないとしており、事実上、任意整理をすることはできないということになります。

但し、保護費での返済が許されないということですので、短期生活保護利用で、すぐに返済はできないが、仕事が決まったら、生活保護を廃止して、返済したいという方については、法テラスは支援しています。
生活保護利用中の返済はダメですが、
1保護利用→
2司法書士を使って、返済ストップの通知を貸金業者に送る。(それに当たって法テラスが費用を立て替え)→
3仕事が決まって保護廃止→司法書士が返済交渉し、返済スタート
という形は許されています。

※但し、この場合は、保護廃止していますので、法テラスが立て替えた必要については、就職してから返済をするという形になり、免除にはなりません。
法テラスの免除の制度は、保護費から立替費用を捻出するのは不可能だからという趣旨ですので、保護廃止していれば支払い可能ということになります。

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4生活保護と時効

生活保護利用の方が、時効手続きをするのは、なんらの問題もなく、寧ろ保護課も推奨する立場です。
といいますのは、保護課は返済されると困るという立場ですので、時効手続きをすることによって、返済の心配がなくなるのはとても歓迎すべきことなのです。

ですので、同じように役所である、法律費用立替制度を行っている法テラスもこれには積極的に支援してくれます。(なお、法テラスから保護課に連絡がいったりすることはありません。
また、法テラスの免除の制度は、保護費から立替費用を捻出するのは不可能だからという趣旨ですので、なおも生活保護を利用する見込みの方については、立替費用も免除されます。

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5生活保護と破産

生活保護利用の方が、破産手続きをするのは、なんらの問題もなく、寧ろ保護課も推奨する立場です。
といいますのは、保護課は返済されると困るという立場ですので、破産手続きをすることによって、返済の心配がなくなるのはとても歓迎すべきことなのです。

ですので、同じように役所である、法律費用立替制度を行っている法テラスもこれには積極的に支援してくれます。(なお、法テラスから保護課に連絡がいったりすることはありません。
また、法テラスの免除の制度は、保護費から立替費用を捻出するのは不可能だからという趣旨ですので、なおも生活保護を利用する見込みの方については、立替費用も免除されます。

また、裁判所からしますと、生活保護の方の破産というのは、審理する上でも安心なので、一般の方と比べますと、審理が緩い傾向にあります。

裁判所は破産を審理するに当たって、「実は財産があるのでは?」ということを細かく審査します。

ところが、生活保護利用の方は、保護開始時に、保護課が金融機関に問い合わせをしたり、家庭訪問をするなどして、調査されています。
他の役所によって調査済みなので、財産が隠されているのではという点についてもあまり詮索する必要ありません。

また、「実は頑張ったら働いて返せるのでは?」という裁判所の疑問も、生活保護がなされているということは、保護課が調べて、生活もままならないのだということを認定しているわけですので、その点も裁判所は安心して進めることができるのです。

なお、生活保護について、徴収金等が発生している場合(生活保護法63条、78条)に、その支給時期によっては、一部が免除されるようにもなっています。

当事務所では生活保護利用の方の破産手続きも積極的に行っております。

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