商人に名義を借りて、農協から借りた場合の時効期間

時効判例解説4 名古屋高裁平成5年11月26日

※1農協から一般の人への貸付債権の時効は10年(農協は商人ではない)
※2農協から商人への貸付債権の時効は5年

事例

昭和52年5月2日 農協は商人であるBにお金を貸した。(返済期限 昭和53年5月2日)

昭和63年 Bが返済しないので、農協はBに対して貸金返還請求訴訟を提起した。

Bは、自分は商人なので、5年の時効にかかる。返済期限から約8年経っているので、時効援用すると主張。

農協は、一般の人であるAが商人であるBに名義を借りて、農協からお金を借りたのが実態なので、一般の人への貸付債権の時効期間(10年)で計算すべきとして、時効になっていないと反論した。

裁判所の判断

B勝訴(時効を認めた)
商法503条2項より、商人であるBのした借入行為は、Bの営業のためになされたものと推定を受ける。
農協の反論を採用するには、この推定を覆すべく、Bの営業の為になされたものではないと証拠が必要であるが、そのような証拠はない。
従って、時効期間は商人の場合の5年が採用される。※3

農協が、名義貸しの実態を立証できなかったという事例です。
証拠次第では、農協の主張も通りえたということになります。

商法
第五百三条 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。
2 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。

※3 大判大正4年2月8日
債務者のための商行為であるときは、債権者のためには商行為でなくても本条(5年)の消滅時効の適用がある。

※4 2020年4月1日以降、農協から一般の人への貸付債権の時効も5年に改正されます。