主債務者について判決等によって時効期間が延びた場合、保証人についても時効期間が延長されるか

時効判例解説6 最高裁昭和43年10月17日

※1 第173条(2年の短期消滅時効)
次に掲げる債権は、2年間行使しないときは、消滅する。
(1)生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権

※2 民法174条の2
確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
(2020.4以降は、民法169条。文言は変わるが、全く同じ内容。)

事例

債権者X 債務者A 保証人B 保証人C
昭和37年4月17日 X,A,B,他1名との間で電気製品の取引契約に基づく未払金に関して債務承認、分割払いをする旨の調停が成立した。※2

昭和38年9月15日 主債務者Aによる支払がこの日を最後に止まった。(未払いあり)

昭和40年9月15日 債権者Xは、保証人C(昭和37年の調停に参加していない)に対して保証債務の履行請求を行ったが、保証人Cは、2年の短期消滅時効※1を主張した。

裁判所の判断
債権者X勝訴(2年の時効を認めなかった)

短期消滅時効2年の債務について、調停を経たことにより、民法174条の2により、主債務者Aとの関係では10年になります。
これが、調停に参加していない保証人Cについても10年になるかというのが、この裁判で争われたポイントでした。

これに関し、民法457条1項※3は、の規定は、主債務が時効中断(更新)すれば、保証債務も時効中断(更新)するというもので、これがなぜかというと、保証債務の附従性に基づき、主債務の時効によって消滅する前に保証債務もセットで消滅を防ぐという規定であると判断しました。

そうすると、民法174条の2によって、10年に時効期間が延長されると、保証人も同じように10年に延長されるということとなります。

なお、保証人Cは調停に参加してないのにという疑問がわくかもしれません。
これは、民法457条1項が、一方通行的に作用するという風に理解するとよいと思います。

この件とは逆のケースで、保証人との間で判決が確定した場合、保証人は民法174条の2で時効期間が10年になります。
ところが、この効果が主債務者に及ぶかというと及びません。(大審院昭和20年9月10日)
民法457条1項は、主債務→保証人への効果を規定しているのであって、逆はないからです。

そしてこの場合、主債務者は元の期間での時効主張が可能です。
さらに、主債務者の時効を保証人が援用すると、主債務がなくなり、附従性で保証債務も消えてなくなります。
(この効果は債権者と保証人の間でのみ発生しますので、主債務者は自分も払いたくなければ、主債務者として別途時効主張する必要があります。)

※3
(主たる債務者について生じた事由の効力)
第四百五十七条  主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

第四百五十七条 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
(2020.4以降の文言。改正前も文言は違うものの同じ。)